近視と遠視
目に入ってきた光は角膜と水晶体の2種類のレンズを通して屈折されて眼の奥にある網膜というスクリーンにピントが合うようにコントロールされます。
正視(近視も遠視もない状態)では遠くを見た場合そのまま網膜にピントが合いますが、近くを見た場合はピントが網膜の後ろに合ってしまうため水晶体の厚みをコントロールして網膜にピントを合わせます。このコントロールを調節と呼びます。近くを見るほど調節の量が増えるため疲れます。
角膜から網膜までの奥行を眼軸長といいます。遠くを見たときに眼軸長が長すぎて網膜の前にピントが合ってしまうのが近視、眼軸長が短かすぎてスクリーンの後ろにピントが合ってしまうのが遠視です。近視は遠くは見えにくいですが近くはよく見えます。遠視は常に調節をしている状態なので疲れやすくなります。遠視が強くなると調節の限界を超えて遠くも近くも見えなくなってしまいます。
近視を進行させないことと遠視治療の必要性
近視は複数の遺伝因子のもとに環境因子が合わさって発症すると考えられています。近視は進行すると網膜剥離、緑内障、近視性網脈絡膜萎縮、近視性視神経症、高度近視性内斜視などのさまざまな視機能障害を生じ、わが国では失明原因の5番目に位置しています。これらの視力障害は近視が強くなる程、増加していき、眼鏡のレンズも厚くなり、眼鏡では視力を出すことが難しくなります。生活の質(QOL)を著しく落とすことになります。
近視が発症する8歳頃から近視が落ちつく18歳頃迄の間に近視の進行を抑制することが重要です。特に小学校入学以前に近視を発症してしまう早期の近視発症例は強度近視に至る可能性が高く注意が必要です。
最近、近視の進むメカニズムもだんだんわかってきました。長時間、近くのものを見ることで近視は進行してしまいます。最近はスマートフォンやタブレット端末などの近視を誘発する機器が増えてきているので注意して下さい。また、安易な眼鏡の装用は近視を進行させてしまいます。
初期の近視は視力の低下がないために視力が良いと大丈夫だと安心してしまいますが、視力の低下がない時期に近視を発見することが大切です。強い遠視の場合は視力の発達を妨げることがあり就学時前迄のなるべく早めに治療を始める必要があります。
当院では正確な近視や遠視の状態を把握したのちに個々にあった治療を進めて行きます。近視を100%抑える治療は残念ながら現時点ではありません。しかしオルソケラトロジーなどかなり効果のある治療もあります。早期発見が大切なポイントです。遠視、近視とも視力検査のできる4歳になったら一度診察を受けて下さい。